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カテゴリ:本( 46 )
「長いお別れ」  レイモンド・チャンドラー
a0068930_18111754.jpgずいぶん昔の話になるが、私にはたいそう憧れた人がいた。
女性を寄せ付けないようなイメージのある人だった。親しくなりたいと思いながら、何の共通点も持たない私は、遠くからその彼を見つめていた。
ある日、彼の持ち物に文庫本がのぞいていた。
私は本屋へ走り、いつか話す機会があったら「好きな本だ」と言って彼に運命的なものを感じさせられないか、などと姑息なことを考えながらその本を購入した。
「長いお別れ」レイモンド・チャンドラー。ハヤカワ文庫だ。

「タフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない。」

本のタイトルを知らなくても、この台詞を耳にする人は多い。
実際、ハヤカワ文庫の訳では、
『しっかりしていなかったら、生きていられない。
やさしくなれなかったら、生きている資格がない。』
となっている。そして「長いお別れ」というドラマの中で、この台詞は痛いほど切ない。

厚い文庫本を読み終えた私は、私立探偵 フィリップ・マーロウに恋をした。
そして、「さらば愛しき女よ」「プレイバック」と続けた。

フィリップ・マーロウのかっこよさといったら、たとえようがない。
彼の語る切ない台詞は、まだまだあるけれど勿体なくて書けない。
いったん胸に納めたその台詞をときどき出してきてじっくり味わう、牛のように。
あこがれの彼も同じようにフィリップ・マーロウに恋をしていたのだろう。
彼のようになりたかったのだな、と思えた。

ハードボイルド小説はこれっきり。
外国文学を避けていた私は、最初に最高の小説を読んでしまったような気がした。

以来18年、この文庫本が手許にあるということは、まだ彼に恋をしたままなのだろうか?もちろん、いかした私立探偵のフィリップ・マーロウに。

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by matsuura-hatsumi | 2006-04-26 18:11 |
ぼっけえ、きょうてえ   岩井志麻子
a0068930_18505372.jpg 血と汚辱にまみれた地獄道…。
今宵、女郎が語り明かす驚愕の寝物語。
レビューにそうあるこの本は、6年前から私の本棚に並んでいる。
お隣の県、岡山ではとても恐いことを「ぼっけえ、きょうてえ」と言うそうだ。
そして、そのタイトル通り「きょうてえ」物語が書かれてあった。

 99年に第六回日本ホラー小説大賞をとったときのことを覚えている。とにかく、誰もが絶賛していた。
「本当に恐い話というのは、こういう作品のことを言うのだ」
と審査員の誰かが書いていた。
私は、自分と年齢も住所も近い作者に羨望を含んだ興味を抱き本を手にした。

 恐い、というよりもあまりに哀しいその話を読んだ晩は一睡も出来なかった。
痩せた土地しかない貧しい寒村、売られて女郎になるしか道のない娘、
生まれたときから抱えてきた孤独と絶望、当たり前のように持っている残酷な心…
読み終えたときに「もう、二度とこの本は読まない。」そう心に決めた。
「ぼっけえ、きょうてえ。」から得られるものは何もないと感じたからだ。

たとえ、娯楽小説でも官能小説でも、読み終えたときに私は何かを求める。
知識かもしれないし、感動かもしれない。
希望かもしれないし、小さな諦めかもしれない。
自分自身に「何か」を残したいと思ってしまうのだ。
何度読んでもそのたびに異なった「何か」を授けてくれる本もある。
同じ「何か」を感じたくて再び手に取る本もある。
私にとって読書とはそういうもので、
「ぼっけえ、きょうてえ。」には、それが何もなかったということだ。
一縷の望みも救いも何もない、強いて言えばどん底を垣間見た衝撃は、あった。
そういう話だった。

 何よりも切なく、胸をえぐられるほどの痛みを覚えるのは、
話の本筋が、あながちフィクションとも言えないところだ。
作者は地元の図書館へ通い、古い新聞の事件を手がかりにして小説を書いていた。
実際、水呑百姓の家の娘が女郎に売られる話など何処にでもある。
だから、哀しいのだ。せめて作り話の世界なら、ほんの少しでいいからその女郎に「希望」をもたらせて欲しかった。
そしてそういう自分の甘さも突きつけられる。

 作者は受賞後、子どもを置いて離婚をした。
東京へ出た彼女はもう別人なのだろう。男転がしの本まで出してしまった。
ブルガリのトゥボガス スネークが腕に巻き付いた彼女のポートレイトを見るたびに
「ぼっけえ、きょうてえ。」の、あの女は彼女自身ではないか、と思ってみたりする。


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by matsuura-hatsumi | 2006-03-28 18:51 |
趣味は読書。
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好きな本は、自分で手に入れて何度でも読むタイプだ。だから自然に本の数が増える。
小さい頃から「本は大切なもの」と教わってきたので、自分の本を捨てるなどという考えは毛頭なく、跨ぐことすらしない。衝動買いや表紙買いでハズレた本においても、である。雑誌に至っては、古ければ古いほど手放してしまえば二度と読むことはできない。
そういうわけで家に本が増えるのだ。
 以前誰かのコラムに、「昔から“家には借りて住め、本は買って読め”といわれている」と書かれていた。若い頃だったが何となくその意味が解るような気がした。
20年以上読んでいる本がある。中学時代に感じたことと今思うことは当たり前のように違い、手許にあるからこそその違いに肌で触れ、考えることができるのだ。あの頃はピュアだったとか、今の自分は穿った見方をしていないか、とか。私の場合、そういう過程も読書の中に入っているのだ。
 そうは言っても目の前の「もう読む予定のない本」を何とかしなくてはならない。公民館の図書室に置いてもらったり、ネットオークションや古本屋に売ったりしていたが、いつしかそれも疲れてしまった。それに、そうそうハズレては私のお小遣いだってもたない。
 本当の本当に手許に置きたい本だけを手に入れるにはどうすればいいのか。
それは、長い間のテーマで未だ解決方法は見つかっていない。ただ、模索中に思ったのが「本って縁だなぁ」ってこと。どういうキッカケで自分の目に留まり、手に取るのか。これはもう偶然としかいえない。聞き飽きたフレーズかもしれないが「男と女の出逢い」と同じ。
 最近は図書館で借りて読んで手元に置いておきたいと思うものを購入するという手順がスタンダードになってきた。もちろん読みたい本がすべてあるわけではないので、自分のインスピレーションに「賭けて」購入する物もある。
「アタリ」に出逢う確率は減ったけど、自分の時間とお金を無駄なく使う方を私は選んだ。
長い年月をかけて楽しむ作品に出逢うには、やはり長い年月をかけて然るべきだと思ったからだ。
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by matsuura-hatsumi | 2006-01-30 17:48 |
「初ものがたり」宮部みゆき
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 初めて宮部みゆきの作品を読んだのは彼女が「火車」で山本周五郎賞を取った頃だと記憶している。実はこの「火車」を私は原作より先にTVのサスペンス劇場で見た。それも偶然の昼間の再放送とあわせて二度も見た。そしてその後、「火車」を本屋へ買いに行った。
 彼女の作品はどれも素晴らしいと思うが私はその中でも取り分け時代小説が好きだ。
江戸の、その多くは棟割り長屋を舞台に繰り広げられる「庶民の平凡な生活」。そして事件。
「初ものがたり」はそれぞれの章に江戸の四季を彩る「初もの」が盛り込まれている。スーパーに行けば季節に関係なくほとんどの物が揃う現代に暮らす私にはそれがまた、新鮮に映る。
そしてひとたび読み始めたら最後、がっぷりハマり宮部ワールドへと旅立ってしまうのだ。
 彼女の小説は毒を含んでいる、と思う。ある意味では残酷だ。
決して「ヨカッタ、ヨカッタ。」では終わらない。
誰しも心の中に隠し持つ、無意識の悪意を鋭いナイフでえぐり出し、善良な庶民でさえ容赦なく奈落の底へ突き落とす。
読んでいる私も尖った爪の持ち主に心臓を掴まれたように胸が痛い。
数日間、落ち込むこともある。
それでも私が「宮部みゆき」を読み続ける理由は、絶望の中の一条の光や残忍な事件の後日談に彼女の本当の優しさを見ることが出来るからだ。
人として、忘れてはならない何かをそっと示してくれているような気がするからだ。
 人に勧められると素直に従うことの出来ない私が言うのも何だが、「宮部みゆき」の本はいい。私は彼女の小説たちがとても好きだ。
一人でも多くの人に彼女の作品を読んで欲しいと心から願っている。

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by matsuura-hatsumi | 2005-12-09 23:19 |
あなたの文章が恋しいです。
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40才を目の前にして、心の中に蓋のついた箱が増えました。泣きたい、と思ったときにはやはりあなたの文章が恋しいです。

これは、告白に近い。
年甲斐もなく告白をしてしまった。

彼は毎週金曜日になると、私の元へ素敵な文章を送ってくれる。私は彼の文章に幾度となく励まされ反省を促され胸を締め付けられ涙を流しました。これほど人の気持ちを揺さぶることのできるコラムは他にはないと思うのです。

メールマガジン「日刊デジクリ」(http://www.dgcr.com/)の中で「映画と夜と音楽と・・・」というコラムを書かれている十河進さんがその方だ。そして、そのコラムをまとめた本が先日発売された。
[映画がなければ生きていけない]というタイトルだ。


今にして思えばその本の準備のためだったのだろう、二ヶ月ほど前に十河さんがコラムを休まれたことがあった。私はたいそう寂しい思いをし、再開の時にはたまらずタイトルのようなmailを送ってしまったのだ。「再開ありがとうございます」のお礼とともに。

個人に宛てたmailの内容をここに書くのは失礼かと思ったが、私が何かを表現するときに十河さんの存在なしには語ることができないような気がして・・・
そう思いながら「どうか、これ以上有名にはならないで」と願う自分が居たりもするのだ。複雑。
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by matsuura-hatsumi | 2005-11-25 18:28 |
死ぬ気でやれよ、死なないから。
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突然、本当に突然、この言葉が目に飛び込んできた。真っ赤な本の真っ赤な帯に白抜きで書かれた衝撃的なアイツイコトバ、「死ぬ気でやれよ、死なないから。」

私にはマゾヒズムの素養は無いと思うのだけど、この言葉に触れたとき、火傷を負ったときのような痛みと同時に、その痛みを認めたときに得られる全身が痺れるような快感を覚えてしまった。内容については推して知るべし、私はその赤い本を手に取りレジへと向かったのだ。赤い太陽の照りつける8月のことだった。

私は今流行りの癒し本や励まし本にはいっさい興味がないし、この本はそもそもそういう類のものではない。「そのままでいいんだ」とか「君は君なんだよ」とか、そんなその場しのぎの言葉などどこを探しても書いていない。逆に今の自分を否定する優しさのカケラもないコトバたちをただひたすらに鞭打たれるような、燃えてくるような(ほ、本当に違うんだけど…)思いで読み終えた。
ひとつひとつの短いフレーズには、経験に基づいた厳しいメッセージが添えられていてそれが人の心を動かしているのだと思う。

 カッコイイ、杉村太郎。私って能く能くのアツイ者好きだな、と呆れているところだ。アツイ人には惹かれますよね、カッコイイ人は皆、アツイから。
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by matsuura-hatsumi | 2005-11-19 00:23 |



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